「ボビンレース」は、マリー・アントワネットの肖像画などにも描かれるドレスの袖や、デコルテの縁などを3段4段、華やかに飾るレースのことだ。
かぎ針編みのレースと比べて、薄くフラット。
繊細巧緻の美、手芸の極致、糸の宝石、織物の貴族ともいわれる。
これまでアンティークレースを見る機会はあったが、制作中のものを今日、初めて目にした。
固定した型紙の上に、デザインの通りにピンがいくつもいくつも、まるで針山のように固定する。
そのピンに沿って、細長い糸巻き・ボビンを動かして、糸を左右に交差させて織り上げていく。
ボビンと名がついているから、糸巻きまではぼんやりとわかっていたけれど、こんなふうに作るとは……ちょっと想像していなかった。
このボビンレースを製作していたのは、25年近く一緒に仕事をしてきたYukiさん。引っ越しをした彼女の新居に遊びに行って、制作途中のコレを発見してしまった。
使用する糸が細ければ細いほど薄いレースになる。繊細なデザインのレースを作るときには100本以上のボビンを使うこともあるという
気が遠くなるほど時間と技術を要する手工芸なのだ。
ボビンレースは16世紀にイタリアで生まれ、17世紀にヨーロッパ中に広まり、18世紀、宮廷貴族社会に支えられ、全盛期を迎えた。
このレースは富の象徴でもあったのだ。
王侯貴族の肖像画は、この豪華なレースなくしてはありえない。
しかしフランス革命での貴族社会の崩壊とともに、ボビンレースは衰退。
現在では機械レースに追われ、手工芸のボビンレースはほとんど姿を消した。
アンティークレースを見ると、いつも、どうやってこんなものを作るんだろうと思っていた。本当にきれいで繊細で、でも驚くほど高価でもあって……。
その疑問がとけた。
Yukiさんは、フランス刺繍で絵も描く。
彼女が手掛ける手工芸のページがいつも素敵なわけである。
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