2011年12月24日土曜日

12月22日世田谷パブリックシアター「欲望という名の電車」

「欲望という名の電車」 作:テネシー・ウィリアムズ 訳:鳴海四郎
演出:鵜山仁   音楽・演奏:小曽根真
出演:高畑淳子、神野三鈴、宅間孝行、小林正寛、金内喜久夫、塾一久、川辺邦弘、山本道子、宇宙、津田真澄


 Desire(欲望通り行き)という電車に乗って、ブランチ・デュボワ(高畑)はニューオリンズに住む妹ステラ(神野)の家にやってきた。ブランチは南部のオリオールの名家に育ったが、家族の看護などで財産を使い果たしていた。
 病的なほど精神が不安定な上に上流社会出身を鼻にかけるブランチの行動が、気に障り反発するステラの夫スタンリー(宅間)。やがて、ブランチの過去が次々に暴かれ彼女の精神は壊れていく。


 一瞬とまどいを感じるほど、高畑さんのブランチは明るい。
 おおらかさと滑稽味は彼女の持ち味でもあると思うが、ブランチの言葉に触発されて、客席のあちこちでときどき笑いがもれてしまうのだ。だがそうやって、するりと高畑ブランチは観客の心の中に入り込む。だからなんだろうか。彼女の精神が崩壊していく過程は本当にわかりやすかった。
 しかしそのために、貴族的上流社会からの没落するという痛みや時代性が薄まってしまったようで、そこはちょっと残念だった。


 神野さん演じるステラは、生命力にあふれていた。貴族的上流社会を捨て、ぎりぎりのところで踏みとどまり、たくましく生きる女性を好演して魅力的だった。
 神野さんは、2011年4月にシアターコクーンで上演された「トップガールズ」に、女性であることを隠し法王になった ヨハンナ役で出ていたのも、拝見。
 厚みのある、ハートフルな女優さんだと思う。


 音楽も素晴らしかった。上手に置かれたグランドピアノを小曽根真が物語に寄り添うように奏でる。物語のひと筋の道を照らしているかのように。拍手。

0 件のコメント:

コメントを投稿