2012年3月1日木曜日

2月29日 紀伊国屋サザンシアター「雪やこんこん」


井上ひさし生誕77フェスティバル2012 第2弾
作・井上ひさし
演出・鵜山
出演:高畑淳子、金内喜久夫、今 拓哉、村田雄浩、宇宙、山田まりや、髙柳絢子、新井康弘、キムラ緑子

昭和20年代の終わりの吹雪の日、北関東の温泉旅館に併設された芝居小屋に、女座長(高畑)率いる「中村梅子一座」が辿りつく。しかし、ストリップ剣劇の台頭におされ、給金も満足に払えず、座員は次々にドロン。今や座員は6名のみ。そこに元大衆演劇の大スターで今は旅館の女将・佐藤和子(キムラ)が加わり、だましだまされのどんでん返しがこれでもかというほど続く。

全編に「国定忠治」などの古今東西の大衆演劇の有名なセリフや「お客様のいいお顔があたしたちの心のおマンマ」などなど、井上さんの名台詞がてんこ盛りにちりばめられている。「井上ひさしが浅草フランス座時代から集めつづけた大衆演劇の作者役者の宝石のような名台詞が、雪の花ふぶきのように舞散る」(チラシから引用)そのままの舞台なのである。

井上作品にはたまに、途中までは滅法おもしろいのに、終わりがアレッ!?というものもないわけではないのだけれど、この作品は最後まで「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」という井上スピリットがパワフルに続き、後味もとてもいい。
どん詰まりの人間の心意気。気風のよさには、胸がすかっ。そしてエピソードが繰り広げられるたびに、息をのみ、あっと驚き、ほろりとして、やっぱり爆笑なのである。

高畑さんの声、セリフ回しの良さ。そして全身を自在に使っての素晴らしい演技。「裸で横に歩く奴が栄えて、まっすぐ芸で押してきたものがバカをみる世の中でございます。この頭の上の空に日光、月光そして星の光と三つの光のあるうちは、どう落ちぶれようと、中村梅子、役者としての魂をくもらせたくない料簡でございます」といった啖呵の切れも抜群。中村梅子は高畑淳子のはまり役といっていいのでは!

そしてキムラさん、チャーミングで、とにかく達者っ! 

 村田さん演じる国鉄労組出身の不細工な女形の金吾と、今さん演じる二枚目役者信夫の丁々発止も息がぴったり。山田さん演じる娘役ひろみもせこく、可愛いい。
金内さんは古手の座員を、新井さんも番頭を好演。

井上作品「キネマの天地」(20119月・紀伊国屋サザンシアター:麻実れい、三田和代、秋山菜津子、大和田美帆)の舞台は映画。「雪やこんこん」は大衆演劇。ふたつとも、役者と観客双方に捧げられた作品なのだなぁとしみじみ。
その日、朝から東京は雪がふり、夜はキンと冷え込んだけれど、ホットな気持ちで帰宅しました。

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