2012年3月24日土曜日

3月23日 東京宝塚劇場「エドワード8世/Misty Station」月組


ついにこの日が来てしまった。霧矢さんの退団公演の幕開けである。

ミュージカル『エドワード8世』-王冠を賭けた恋-
作・演出/大野拓史

 「王冠を賭けた恋」として有名な、英国王エドワード8世と、アメリカ国籍のウォリス・シンプソン夫人の恋愛譚。モダンな感覚と気さくな人柄が人々に愛されたエドワード8世が王の座を捨てた生きざまを史実に基づきつつ、霧矢さんの魅力たっぷりに描く。

ブリリアントステージ『Misty Station』-霧の終着駅-
作・演出/齋藤吉正

 夜明け前のプラットホーム。始発列車の汽笛は青年を未知なる旅へと誘う。出会い……、恋……、別れ……。青年の旅先でのトピックスを華やかなショーシーンで展開するドラマティックなショー作品。

『エドワード8世』では、霧矢さんの高貴な演技に圧倒された。

皇太子の彼のまわりに集まってくるのは彼の人気を利用しようとする人ばかり。たが、彼はいつか一人の男性として愛してくれる女性と出会いたいと願っていた。
蒼乃さん演じるウォリスもまた、デイヴィッドを利用しようと近づいたのだが、やがてふたりは次第に惹かれていく。しかしウォリスは人妻。将来の国王とアメリカ国籍の人妻とが結ばれる可能性はない。

 互いに憎まれ口を叩きながら、次第にふたりが寄り添い、絆を深めていくところがいい。

そして愛する人のためにすべての地位や究極の名誉を投げだすデイヴィッド。
そのロマンチックなこと。
王室に別れを告げ、新しい世界へと旅立つデイヴィッドの姿に、霧矢さんの卒業が重なって胸が熱くなる。
そしてクライマックスシーン。銀橋の真ん中に立った霧矢さんの歌が、大劇場の隅々にまで響き渡る。歌声で空間が満ちる。

 ショーは青年Mistyが世界で一番の宝物を探しに、冒険の旅へと旅立つストーリー仕立てになっていた
霧矢さんとともに今公演で退団する、蒼乃さんの魅力全開のダンスシーン、青樹さんのソロの歌やダンスなどそれぞれの人に光があたり、そのたびに胸がいっぱいになる。

列車の座席で眠りこんでいた霧矢さんが目覚めたところから、サヨナラモードに。
月組の仲間たちと互いの顔を見交わすシーン、そして黒燕尾の群舞。
「マイ・ウェイ」のデュエットダンス……。

それぞれが霧矢さんの魅力がスパークするような、そして宝塚の魅力をぎゅっと詰め込んだような演目だった。

 霧矢さんは飛び抜けた歌唱力、王道をいくダンス、豊かな表現力の芝居と、3拍子揃った稀有な男役トップとして宝塚の一時代を築いた人である。
 宝塚生活18年。
 
 通し稽古の立ち取材で、霧矢さんは次のように言った。
「新たな気持ちでとか、最後だから、という意気込みは特にありません。東京のお客さまにも喜んでいただける舞台を、またお届けしたいなと考えています。(今回の作品が最後の公演にふさわしい内容になっていることについて)自分の心境にシンクロする部分はすごくあるのだけど、それをお客さまに伝えることが仕事です。自分たちだけの感情で思いつめ過ぎず、皆様にいろんな感情の取り方をしていただけたらいいです。(宝塚は)自分の人生を捧げられる、情熱を注げる、そんな場所ですね。千秋楽まで、その気持ちは変わらないので、一応“終着駅”といいますか、そういった視点はありますが、常に前進し続けたい、進化し続けたいと思っています」
 417日にもう一度、霧矢さんのこの舞台を見に行く。
  
 素晴らしい男役。
 もう2度と見ることができないと思うと、立ち見でもいいから、何度も駆けつけたいくらい。
 本当にさびしいです

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