2012年1月10日火曜日

1月9日国立能楽堂「至高の華 梅若玄祥舞台生活六十周年祝賀能」





復曲能 松山天狗 
シテ 梅若玄祥  ツレ  梅若紀彰 鷹尾章弘 鷹尾維教 
ワキ  宝生欣哉 

狂言 末広かり 
シテ  野村萬斎 アド   高野和憲   石田幸雄
土蜘 笹ガニ 
シテ   梅若玄祥 ツレ   観世喜正   小田切亮磨   山崎友正 
ワキ   宝生欣哉 ワキツレ宝生朝哉 則久英志  大日方寛 


国立能楽堂の舞台の上には注連縄がかかり、お正月気分が残っていた。


「松山天狗」は観世流としての復曲能。
 西行が前シテの老人(玄祥さん)に道案内を頼み、崇徳院の廟所を前に額づく。やがて道案内をした老人は作り物の中に消えていく。アイの地謡が響き、その後、作り物の引き回しがとりはらわれ、後シテの崇徳院が姿を現す。崇徳院の魂魄がさまよい出たのだ。
 友・西行の来訪に、崇徳院は立ち上がり楽を舞う。やがて、崇徳院は生前の敗残を思い出し……。


「末広かり」  萬斎さんに元気がなかったような。もっと声がのびると思ったのに……。


「土蜘」 玄祥さんの手の先から蜘蛛の糸が生き物のようにふわーっと流れ出て……後シテになってからはさらにさらに、ふわーっ、ふわーっ、ふわーっ。何本もの糸が放物線を描き、その華やかで、美しいこと、ため息がもれんばかり。


 両親の影響で、謡にはなじみがある。
 でも、本当のおもしろさに気付いたのは、梅若玄祥さんが梅若六郎という名のときに国立能楽堂で演じた「船弁慶」を見てからだ。
 
 舞台上には装置はひとつもなく、照明の手助けもない。
 しかし、玄祥さんが舞台の中央に立ち、構えた途端、そここそがまぎれもなく世界の中心に変わる。
 玄祥さんが首をほんの少し動かすだけで、こちらの心が動く。
 手をふっと斜めにあげるだけで、その手の先にあるものが見える。
 見えないものがくっきりと輪郭を持ち始める。
  
 やがて鼓や笛が鳴り始めると、舞と謡と、いうならばセッションに。
 掛け合いである。ジャジーでもある。


 そして浄化されていく。能舞台(世界全体)が。
 なんともいえない幸福感に包まれる。


 玄祥さんは天から舞い降りた天女そのもののよう。
 舞台を、空間全体を、一瞬にして包み込んでしまう。
 そして限りなく優雅に、私たちの心をふわりとさらっていく。
 
 

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