2012年6月29日金曜日

三谷版「桜の園」で笑いきれる……?!            6月28日パルコ劇場「桜の園」

作 アントン・チェーホフ
翻案・演出 三谷幸喜
出演 浅丘ルリ子 市川しんぺー 神野三鈴 大和田美帆 藤井隆 青木さやか 瀬戸カトリーヌ 高木渉 迫田孝也 阿南健治 藤木孝 江幡高志

アントン・チェーホフの「桜の園」を喜劇にという三谷幸喜さんの試み。

20世紀初頭のロシア。5年前、息子を事故で失ったラネーフスカヤ(浅丘ルリ子)は、夫が死んだあと、所有する『桜の園』を出てパリで愛人と暮らし、資産を使い果たした。領地を任された兄ガーエフも経営の才覚はなく、『桜の園』は競売にかけられることになる。競売を前に『桜の園』に、ラネーフスカヤが帰ってくる……。

没落した地主で、『桜の園』の持ち主・ラネーフスカヤ役の浅丘ルリ子さんの何物も汚すことができないような高貴さが全体をぐいぐい引っ張っていく。地主階級の世間離れした感じは、浅丘さんならでは。

ワーリャを演じた神野さんは役を愛し、深めていることが伝わってきた。

ラネースカフヤと対照的な存在として農奴出身の実業家・ロパーピンの市川しんぺーさんも存在感があった。

でも……

全体を通して、ボケ、ツッコミ、笑いを狙ったセリフ、会話のおかしさは目白押しなのだが、笑いきれない。
わかりやすいといえばわかりやすいけれど、人物の描き方が全体に平面的に思えて、浅丘さん、神野さん、市川さんなど肉体を持つ人物の周りを、アニメのキャラクターが取り巻いているような感じがしてしまったのかも。

 狙いすぎ?


 辛口ですみません。
 

2012年6月26日火曜日

6月26日 帝国劇場「エリザベート」春野エリザベート×石丸トート×岡田フランツ×杜ゾフィーの千秋楽in東京 そして新イライザのちらし





ついにこの日がやってきた。


春野エリザベートの千秋楽in東京(ほんとの千秋楽は明日の瀬奈エリザベートで!)
肌寒いほどだった昨日から一転、今日はうららかを通り越して初夏を思わせるいいお天気。
帝国劇場の客席にも、出入り口からきれいな夕焼けの光が差し込んでいた。
夕方6時に、ため息が出るほど明るくキレイなオレンジの光……。
なんだかこの空間にいられることが信じられないような、不思議な感覚に。


最初の群舞&合唱から肌が泡立つような迫力!
舞台から歌が踊りが渦となって迫ってくる。


石丸トート、さすがの切れの良さと表現力。圧巻!


春野エリザベートも、声の艶がさらに増している。
そして、表現も、力強くなっていることに驚く。
自分の意思を貫き、孤独にも真正面から向き合う強さ、覚悟が、より深くひたひたと伝わってくるのだ。
心の中で赤い血を流しても、自分の生き方は曲げない。
深い闇を旅し続ける寂寥感が、今回、胸をえぐるような感じで伝わってきた。


岡田フランツのエリザベートを愛する気持ちもじんときた。
でもフランツは皇帝中の皇帝。
愛しているといいつつ、寄り添いたいといいつつ、エリザベートに、自分の立場に立ったならわかってくれるはずだ、とかいってしまう。
エリザベートがなぜ彼から離れていったかは理解できないのだ。(エリザベートが善でフランツが悪ではないけれど)
その感じも岡田フランツはしっかりと描き出してくれた。


杜ゾフィーは怖い! 寿ゾフィーよりも怖い。
フランツへの想い、ハプスブルク家をひたすら存続させるためになすべきことをなすという思いが際立った。亡くなる前のシーンは胸が熱くなった。



そして黒天使。素晴らしい。ほんと、動きがいいのなんのって……。
ミルクなどのシーンも絶品。一瞬も見逃したくないって気にさせられる。
こうした芸の巧者たちがこの舞台を厚みのあるものにしてくれているんだなぁ。


エルマーたち革命家も素敵。カフェのシーン、いいよねぇ。


カーテンコールで、本日で千秋楽のキャストのご挨拶があった。(興奮して聞いていたので、微妙に違っているかもしれませんが…)


杜ゾフィー「みんなに愛されるエリザベート。またよんでもらえるように精進していきます」
岡田フランツ「3歩進んだら5歩下がったり、横に行ったり、斜めに行ったりしながら……最後まで進化を忘れることなく核心に近づけたら…」


石丸トート「『愛と死のロンド』で春野エリザベートがほろっと涙をこぼしたのを見て、あれで火がつきました!」  


春野エリザベート「とても緊張して迎えた初日を昨日のことのように覚えています。ここで過ごした時間、大切で愛しいものと感じています。一度、ここでしめくくらせていただきますが、これからまた私なりにエリザベートを進化させていきます


 拍手の嵐。
 スタンディングオベーション!


 本当に幸せな時間だった……。


 夢みたいな時間。空間。


 帝劇で同じ演目を3度見るなんて贅沢をできたことも、私的にすごいこと。
 見るたびにものすごく進化していて……
 こんなの見せつけられたら、好きなものは何度でも見たくなっちゃう。
 ……もちろん、なかなかそうはできないのが現実だけど、今回、思い切って3回行って本当によかった。
 
 芝居って本当に楽しい。芝居は毎日変化する。
 役者も進化する。


 明日からまた節約して、またチケットを買おう!
 酔ったような気分で固く心に誓った夜でした。


帝劇で霧矢さんと真飛さんのW主演「マイ・フェア・レディ」のチラシをもらってきました。
もうチラシができてるんだって、感激。
キリやん、かわいいっ。真飛さん、きれいっ。
「37歳で医者になった~」の真飛さんの看護師長役、すごくよかった。
やっぱり芝居、うまいなぁとドキドキしました。
NHK‐BSの「恋愛検定」でも好演!
今度は舞台ですね。
よかった、舞台に戻ってきてくれて。
本当に楽しみです!
 



 





2012年6月25日月曜日

6月24日 赤坂ACTシアター「サンセット大通り」


作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
脚本・作詞:ドン・ブラック&クリストファー・ハンプトン
修辞・訳詞:中島淳彦
演出:鈴木 裕美
音楽監督:塩田 明弘

 ハリウッドのサンセット大通りにある邸宅のプールで、脚本家ジョー・ギリス(田代万里生)の死体が発見される。死んだ彼はそのいきさつを語りはじめる。
ジョーは脚本が売れず、借金に苦しんでいた。借金取りに追いかけられてジョーが逃げ込んだのは荒れ果てた邸宅。サイレント映画の大女優ノーマ・デスモンド(安蘭けい)が、執事のマックス(鈴木綜馬)とともに住む家だった。
ノーマはジョーに邸宅に住むようにいい、彼女が自分が主演するつもりで書いたという「サロメ」のシナリオを書きなおすようにいう。やがてジョーはノーマと関係を持つ。だが脚本家志望のベティ(彩吹真央)とも恋に落ち、それを知ったノーマは……・

『オペラ座の怪人』や『キャッツ』で有名な作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバー。
この作品は1995年トニー賞で作品賞、作詞・作曲賞、主演女優賞など7部門を受賞した大作である。

ノーマを演じた安蘭さんが登場し、歌が空間に響いた途端、ぞくっ!
往年の大女優の貫禄と迫力、そして弱さやもろさ、時代に忘れられていく悲哀、その上くすっと笑ってしまうコケティッシュさも感じられて安蘭ノーマはとても魅力的。
ノーマを愛し、守り抜こうとつき従うマックスを演じる鈴木さんの歌も胸にしみる。そのまなざし、佇まいも存在感たっぷりだった。
彩吹さんは未来を信じ、チャンスを逃すまいと希望を胸に抱くベティのきらめくような若々しさを色鮮やかに描き出した。
成功を求めて歩いてきたのに夢が砕かれた男・ジョー。それでもあきらめることができない。焦り、業の深さ、挫折に対する悲しみと怒りと絶望……田代さんの『Sunset Boulevard』は圧巻!

ノーマの邸宅での、時間が止まった世界。
そしてハリウッドに集まる若者たちの明るく華やかな夢の世界。
――残酷なまでの対比。

ノーマが映画の撮影所に赴き、往年の名女優として賞賛されるシーンの『As If We Never Said Goodbye』も素晴らしかった。
そして最後にノーマが階段を下りてくるシーン、胸がいっぱいになった。安蘭さんにノーマが乗り移ったような凄みさえ感じさせられた。

人間の欲、希望、挫折、絶望……。生きる喜びと切なさがひたひたと胸を満たす。
 カーテンコールの後、本日は、プレゼント抽選会! 
 鈴木綜馬さんと彩吹真央さんが登場し、3人にサイン入りポスターとTシャツがあたりました。
 おふたりの軽快なおしゃべりが楽しいっ。
 鈴木さんいわく、昨日は彩吹さんのファンの方の総見だったそうです!
   宝塚ファン、がんばってますね。

 彩吹さんの宝塚版「エリザベート」のルドルフ、「ファントム」のキャリエール、大好きです。春野エリックと彩吹キャリエールの銀橋でのデュエット……何度見ても、胸がいっぱいになります。
 

公演画像
左から彩吹真央、田代万里生、鈴木綜馬、安蘭けい

2012年6月23日土曜日

6月23日祝!「マイ・フェア・レディ」真飛聖・霧矢大夢イライザ

 来年5月の日生劇場「マイ・フェア・レディ」のイライザ役に霧矢大夢さんと真飛聖さんのWキャストが決定したとのこと、昨日、発表がありました!
 芝居がめちゃくちゃうまい真飛さん、歌・ダンス・芝居3拍子揃った霧矢さん。
 どちらも本当に楽しみ!
 春野・瀬奈エリザベートに続き、真飛・霧矢イライザ!
 嬉しくてたまりません。
 ……どちらも花組・月組ペアですね♡

2012年6月17日日曜日

6月14日新国立劇場「サロメ」


新国立劇場 中劇場
作:オスカー・ワイルド 翻訳:平野啓一郎 
演出:宮本亜門 出演:多部未華子、成河、麻実れい、奥田瑛二

舞台はエルサレムの宮殿。兄を殺してその妻・ヘロディアを自分のものにしたヘロデ王が宴を開いている。その晩、王女サロメは、地下の井戸に閉じ込められた預言者ヨカナーンの存在を知った。ヨカナーンはヘロデが、兄弟の妻であったヘロディアを略奪したことを批判して投獄されていた。そのヨカナーンに惹かれていくサロメ。だが、ヨカナーンはサロメを拒絶する。ヘロデ王に踊りを求められたサロメは、その代わりにヨカナーンの首を要求する。

サロメといえば妖艶なファム・ファタルというイメージ。
妖艶に踊るサロメの姿と、そこに出現するヨハネの首……。

しかし、今回の宮本「サロメ」は違う。
サロメは、無垢ゆえの残酷さを持つ、大人になる直前の少女として描かれる。何しろテディベアを抱いて登場してしまうのだ。
こういうサロメもあるんだなぁ。
もうちょっと何かがほしいような気がしたけど、とてもフレッシュだった。

多部さんは、表情豊か。
少女の青み、つぼみの固さ、まっすぐな激しさを、体当たりで魅力的に演じた。
目力が……いいっ!

ヨカナーン役の成河(ソンハと読む)さんは、預言者の清廉さとサロメと出会い揺れ動く心など印象的に表現。そのビジュアルはレオナルド・ダ・ヴィンチの名画『洗礼者聖ヨハネ』にインスパイアされたものだという。
プログラムの中に、ダ・ヴィンチの絵が紹介されていて、改めて、その色っぽさ(!!)にはっとした。モナリザを思わせる端正な顔立ちと微笑み、ふっくらとした体のはり、性を超越した美しさである。


奥田瑛二さんのヘロデ王は残念。実の兄を殺し、妻を奪い取り、他にも残忍なことをやりまくってきた王という感じが全然しない。セリフもひたすら軽く単調。過去の悪行に対する恐れ、自分の死への恐怖が伝わってこない。ヨカナーンの首をねだるサロメを拒否する切実さが感じられない。
そのため、物語の核のところが小さく弱くなってしまったと思う。
ヘロディアの連れ子・サロメにちょっかいをだしたくなって「領地の半分をやろう」、ついには「望みを何でも叶える」「何でも」とまで調子よく言っちゃって……「ヨナカーンの首を」と言われたとたん、うろたえる……。
そんな情けない男ではなく、もっと骨太でぎらぎらして……それ故に自らの過去に恐れおののく震えるような弱さが際立つような王を演じてほしかった。

麻実さんは美しさ、妖艶さ、女王としての品格や威厳、そして怖さも感じさせて、ヘロディアそのものだった。
絶対に期待を裏切ることがない麻実さん。
先にある輝く光を常に見つめ続けている人なのだと思う。
自分を律する強さ、細やかさ。
その背中を見つめ、追いかけていきたい! 

舞台のしつらえも、とてもおもしろかった。
 客席前方を取り払い、ステージの周囲を水が入った濠で囲み、地下はヨカナーンのいる牢獄、1階は白を基調としたテラス。
舞台天井には巨大な鏡が据え付けられ、舞台すべてを反転させて映し出している。実像、虚像等しく虚という演出か!?

 皿に盛られたヨカナーンの首がサロメに差し出されるとテラスに真っ赤な血が流れ始め、やがて床全体を覆いつくすところは、赤の美しさと圧倒的な残酷さが際立った。

終演後、亜門さんとヨカナーン役の成河さんによるアフタートークもあった。
亜門さんと役者さんたちが真剣な話し合いを重ねて役作りを深めていく様子がうかがわれて、感動。成河さんの芸に対しての真摯さが伝わってきた。
 今後も期待したいっ♡

2012年6月13日水曜日

6月12日 東京宝塚劇場「華やかなりし日々」「CLIMAX」宙組 私のYUHIさんラストデイ!



6月1日に続いて、2度目の観劇。


「華やかなりし日々」は1920年代のニューヨークが舞台。


ヨーロッパから渡ってきた移民の青年ロナウド(大空祐飛)は、貧しい移民街からのし上がり稀代の詐欺師となって巨万の富を築いた。元ロシア貴族と称して、次の標的とし、劇場を手に入れようとする。そしてその看板女優に大抜擢されたのが、孤児院育ちのジュディ(野々すみ花)。女優になることを夢見るジュディにロナウドはかつの自分を思い出し、恋に落ち、本当の名前を打ち明けてしまう。やがて彼の詐欺行為が警察の知ることとなり、劇場の開幕・ジュディのデビューの日にロナウドは……。








大空さんとニックこと北翔海莉さんのスタイリッシュな詐欺師ぶり、アーサーこと凰稀かなめさんのウォームでさっそうとした刑事、鳳翔大さんを中心とするちょっと笑えるマフィアぶりと、見所もたくさん。野々さんも、一本気でまっすぐな女の子を見事に演じていた。


何より、大空さんのかっこよさ。
なんてったって、全シーン、スーツなんですから。
その背中のラインが、本当に素敵でほれぼれとしてしまった。
男役としてのキャリアが、美意識が後ろ姿にまでにじんでいるんですねぇ。




真っ赤なバラの花束をかついで客席から舞台にあがるシーンは胸どきどき。


6月1日は、私のすぐ脇をまっすぐ前を向いて歩いて行かれたのでした。そのシャープでクールな横顔……忘れられない!


本日は2階席だったので、途中からしか見えなかったけど、6月1日の姿が二重写しになったように、見えました。




そして大空さんが、一人で去っていくラストシーン……(涙)、


.
クライマックスはなぜかクラシック中心の音楽。




ロケットの後のデュエットダンス、そして男役黒燕尾、一人銀橋……。




男役の黒燕尾は素晴らしい。YUHIさんの退団公演ということもあり、みんなの気持ちがYUHIさんにまっすぐに向かっている。その一体感、力強さ、これぞ、宝塚男役の美!


YUHIさんが大階段に立ち、スモークがたかれるところ……胸がじーん。
この姿を目に焼きつけようと、気が付くとまばたきを忘れてしまっていました。


もちろん、「L、O、V、.E、Y、U、ユーヒ!」コールも楽しいっ!
楽しすぎて、しみじみさびしい。


銀ちゃんを思い出してしまって、懐かしさに胸きゅん。




そして最後の白から青へグラデーションが鮮やかな羽根もスタイリッシュで、よく似合っていた。




私は「クラシコ・イタリアーノ」が大好きなので、それに比べるとちょっと物足りないような気もしてしまったのだけれど、どちらも宝塚らしい作品でした。




本日はYUHIさんの同期・壇れいさんも観劇とのこと。




これが私にとってラストYUHIデイ!


ありがとう。YUHIさん。









2012年6月3日日曜日

6月2日 帝国劇場「エリザベート」スタンディングオベーション



本日は「エリザベート」大好きのAKIKOと一緒に2回目の春野「エリザベート」観劇。


初日は石丸トートだったが、今回は山口トートである。


石丸さんのクールで、ロックしているセクシー・トートに比べて、山口トートは妖しさたっぷりの貫禄ねっとり系だった。


声の響き、曲想の作り方が全く違うのがおもしろい。


春野エリザベート――。
おてんばな少女時代もとても自然で愛らしかった。
自分に目覚める様、美貌を磨き上げ、エーデルワイスの花に星型の飾りでアップにする姿、いずれも本当に素敵。
歌も丁寧で、声が柔らかくて、そして心配していた高音域もすーっと伸びて、「私だけに」も表現力たっぷりで、大感動。聴き惚れました。
年齢を重ね、孤独を深めていくところも、とても自然で納得できる。
この透明な感じが、春野さんの魅力なのかも。


初日は前から4列めだったのと、興奮しすぎで、全体を見まわすことができなかったけれど、今回は黒天使やミルクのときの群舞など細部までじっくり見ることができたのも、収穫(ちなみに今回は8列目の中央でした)


拍手が鳴りやまなかった。初日に続き、スタンディングオベーション。
カーテンコールを何度も重ね、会場が明るくなっても、その場を立ち去る人がいない。
明るくなった会場に、もう一度幕が開く。
春野エリザベートと山口トートが笑顔で手をふる。
嵐のような拍手の中、幕がおりた。




なんでこんなに、「エリザベート」っておもしろいんだろう。
 やんちゃな少女時代を過ごしたエリザベートは、皇帝フランツと結婚する。しかし、フランツは母ゾフィーのいうなり。エリザベートは絶望し、自分の人生は自分のものだと覚醒する。家族がばらばらな中で皇太子ルドルフは両親の愛を十分に受けられずに育つ。やがてルドルフは父に反抗し、革命家とともに行動し、挫折。自殺してしまう。
 トートはそんなエリザベートを常に見守り、彼女の愛を得たいと願う。それだからこそ、ルドルフが死んだとき、「殺してほしい」とすがりつくエリザベートを「まだ私を愛していない」と突き放すのだ。
 エリザベートは孤独をどんどん深めていく。晩年、フランツがエリザベートに「人生のゴールは寄り添いたい」と誘っても、「違うゴールをめざす」と拒み、自分の生き方を曲げない。そして最後にルキーニに暗殺されてはじめて「自由な魂が安らげるところに」連れて行ってほしいと、エリザベートはトートの胸に飛び込んでいく……。


 
 楽曲がいいというのはもちろんだけど、
 
女性の自立、滅びの美、傾城の美女……そんなたくさんの要素が私を捉えて離さないのではないかしら。