2012年2月26日日曜日

2月25日 BSプレミアム「大地のファンファーレ」NHK札幌放送局・帯広放送局制作

出演:高良健吾、寺脇康文、蓮佛美沙子、杉本哲太、赤木春恵、柄本佑、古村比呂帯広

ばんえい競馬の新人騎手・北村俊平(高良)の勝利数はデビュー以来わずか1勝。騎手として生きることを諦めかけた俊平だったが「お前は騎手を辞めても生きていけるが、馬は勝てなきゃ肉になるしかない」と現役トップの名騎手・倉橋(寺脇)に叱咤される。さらに競馬場の広報担当の新人・吉野(蓮佛)に勇気付けられ、逃げずに騎手として生きていく決意をかためていく。

「ゲゲゲの女房」の脚本家山本むつみさんの作品である。

キャストも熱演で粒ぞろいだった。
札幌交響楽団の音楽も広がりがあり、かつ北の音色という感じがして合っていた。

人間の再生と成長、先人と受け継ぐ者、仕事というもの、生きるということ。
 希望、見守り、地方に流れている都会とは違う時間、北海道の自然の美しさと厳しさとその中に生きる人々のたくましさ。
 そして馬の迫力、人と馬のつながり……。
世の中、たいへんなことも多いけど、自分の持ち場を大事にして、そこで踏ん張ろう。
小さい歩みであっても、一歩一歩進んでいこう。
素直にそう思わせられる。

「ゲゲゲの女房」でも、舞台「明治おばけ暦」(2011年前進座・脚本・山本むつみ)でも感じたことだが、山本作品には見るものを浄化させる力がある。
見終わったときにすがすがしいのだ。
爽快なのだ。
本当に大事なものを大事にできるようにしようと素直に思えてくる。
世界はすてたもんじゃない。
いとおしいと思える。
 
ばんえい競馬というものを、このドラマで初めて知った。世界で唯一、帯広でだけやっている馬のパワフルなレース。この貴重な文化遺産を、今度北海道に行ったときにはこの目で見たいな。

313日(前篇)、20日(後編)午後10時よりNHK総合で本作品が本放映される。

 
ところで42日(月)午前715分からBSプレミアムで「ゲゲゲの女房」の再放送が開始されることが決定した。
26週・156回が完全再放送だ。
おめでとう。「ゲゲゲの女房」!
こちらも乞うご期待です!

2012年2月22日水曜日

2月22日 ジョシュア・フォア「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」


「羊たちの沈黙」の続編である「ハンニバル」で天才的な頭脳を持つ殺人者ハンニバル・レクター博士はその頭の中に千もの部屋がある広大な宮殿を構築していた。
この宮殿を歩き回るだけで過去のすべての記憶も呼び起こすことができる……小説でこの描写を読んだとき、そんなことができるのは天才だけだ、と思った。

だが天才でなくても、「記憶の宮殿」は誰もが作ることができる。
そう教えてくれたのが、「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」(著:ジョシュア・フォア、訳: 梶浦真美 エクスナレッジ刊)だ。
「記憶の宮殿」は古代ギリシャで知識人の必須のツールであった「記憶術」に由来する。
この記憶術の存在を知った新進気鋭の科学ジャーナリスト(記憶力は人並み)が、その技術を磨きはじめる。そして1年で記憶力の全米チャンピオンになってしまう
そのプロセスをじっくりと描いた渾身の実験ドキュメンタリーがこの一冊だ。

驚いたのは実際に記憶の宮殿を自分でつくってみると、たとえば「タヌキ、ウサギ、クマ、ライオン、ネズミ、サル、ブタ、キリン、ウシ、ウマ」など、通常ではとても覚えられないことが、何回でも頭から出し入れできるということ。
すごい!

しかし、本書のおもしろさはそれだけではない。
こうした記憶術は、文字の発明とともに力を失っていった。
文字にして残しておけば覚える必要はない
どこに何が書いてあるかということだけを覚えておけば済む時代になった。

やがて時は進み、今は文字に書き残す必要さえなくなった。
膨大な記憶容量を持つコンピュータがその代りを務めるようになったからだ。
そして記憶することではなく、いかに外部記憶を活用できるかということが重要視されるようになった。外部記憶から知識や情報を取り出し、それを組み合わせていく……。
今までそのことに何の疑問を持たなかった。
だが、本書を読んで、私達は真に知的に進化したといえるのだろうかという疑念がむくむくと湧き上がってきたのだ。

「私たちの実態は、記憶のネットワークである」
「記憶と想像は、コインの表と裏のようなもの」
 という著者の言葉は重い。
知的行為において記憶力は必要条件であり、基盤となるものでもあるともいう。

確かにそうだと思い、そして覚えることを放棄してはいけないと心に刻みつつも、ではあなたは記憶力を鍛えることができるのか問われると、やはり恐れをなして首をひねってしまうのだけれど……。

ITが発達し、膨大な外部記憶を持ってしまった現代。
文明論としても読みごたえがある。

2012年2月14日火曜日

2月10日 東京宝塚劇場 花組「復活・カノン」



ロビーにはお雛様が飾ってあった。さすが宝塚。
  ミュージカル・プレイ『復活 -恋が終わり、愛が残った-』-レフ・トルストイ作「復活」より-
脚本・演出/石田昌也



19世紀末の帝政ロシア。青年将校ネフリュードフは、召使のカチューシャと許されざる恋に落ちる。数年の歳月が流れ、ネフリュードフは社交界の花形に。貴族の娘との婚約も決まっていたが、ある日、殺人事件の陪審員として裁判所に呼び出される。無実を訴える被告はカチューシャだった。ネフリュードフはすべてを犠牲にしてカチューシャ救おうとする……。


レビュー・ファンタシーク『カノン』-Our Melody-作・演出/三木章雄
蘭寿とむトップ就任後の初のオリジナルショー。世界の名曲にまつわる悲しみ、希望、愛などを歌い、踊りあげる。



蘭寿さん演じるネフリュードフが静なら、壮さん演ずるシェンボックは動。くっきりと対照的で、両者の魅力が浮き彫りに。特に壮さんは、陽気で、溌剌としていて、物語に彩りを与えていた。歌にも拍手!


カチューシャを演じた蘭乃さんの熱演も光っていた。清純な娘が妊娠を機に屋敷を出て心を閉ざして生きる。あろうことか罪に陥れられるが、やがてネフリュードフの愛に触れ、以前の自分を取り戻す……そんな難しい役柄をしっかりと演じ、舞台を引っ張って行っていた。


革命家シモンソン役の愛音さん、弁護士役の華形さん、検事役の朝夏さんも素敵で、やっぱり花組の男役は厚みがあると、ため息。


「カノン」ではシャンソンあり、カンツォーネあり、ジャズありと、華やか。
花組のキレのいいダンスにうっとり。
ここでも、やはり壮さんの歌とダンスが、本当に表情豊かで印象的。
様々な色を持つ、つまりそれだけ芝居心のある役者なのですね。
エリたん、かっこいい!


2012年2月8日水曜日

2月5日 ソケースロック「19年目だよエプロンズ!」


「20周年まであと1年! 30周年まであと11年! 40周年まであと21年!」

エプロンズは、キーボード&編曲のバンマスのJunkei、ヴォーカルのFujitaさん、そして女性ヴォーカルのふぅさん。さらにトロンボーン、サックスがふたり(女性はHondaさん)、トランペットがふたり(Abeさんと青い髪の女性)、ベース、ギター、ドラム、パーカッションと、12人編成のビッグバンド。目指すはjive&jumpな世界。

立ち見が出るほど、ぎゅうぎゅうの観客を前に、キンキラジャケットに黒サングラス姿のFujitaさんが登場。ノリノリのステージが始まった。
このFujitaさん、めちゃ歌うまなのだ。

それでもって、歌の言葉がどれもおかしくて、ちょっと洒落ている。
んっ? なんだって? うっ! あはっ!
肩をすくめたくなったり、吹き出したり、思わず笑顔になってしまう、そんな感じ。
陽気で、愛嬌があって、ウィットがきらきら。

トロンボーンも、サックスも、トランペットも、ドラムスもベースも、パーカッションも、ギターも、もちろんキーボードも、みんな聞かせどころを持っていて、ソロがはじまると、その隣のメンバーはソリストに光があたるようにひょこんとしゃがんだり(ステージもぎゅうぎゅう)、ひらひら両手でソリストを指し示したり。
トロンボーンとサックスの格闘まがいの演奏も、大うけ。

みんな本当にいい顔をしていた。
音楽を一緒にやって、「楽しいっ楽しいっ」って、音も体も心も弾んでいる。

だから会場全体が、幸せ~って気持ちになりました。

ON A SLOWBOAT TO CHINA (スイング♡+)
DADADA!(「ダダダ、ダイエット」と叫ぶ。エプロンズのオリジナル曲)
EVERYBODY NICE BODY (「エブリバディ ナイスバディ エブリバディ ナイスバディ」のフレーズが癖になる。エプロンズのオリジナル曲)
WHAT A WONDERFUL WORLD(御存知サッチモの名曲。日本語の詞が素晴らしくて胸じーん)
などなど、1時間のステージがあっという間。

音楽っていいなぁというライブでありました。
ところで、エプロンズの40周年って……そのとき、私たち、いくつ!?

がんばれぇ~~~っ!